OCTOBER 2006
Diary

 10月15日 「ワーナー・マイカルの日」
 ワーナー・マイカルが15周年だというので、今日一日全作品1000円均一で観られるのです。しかも一作品観たら、1200円で観られる特別割引優待券2枚と、ポップコーン(S)引換券2枚もらえるというサービス付きです。これは観に行かなければなりません。何が何でも観てやると、無理を承知で行きました、新百合ヶ丘!
 
 新百合ヶ丘といえば、駅のそばに今村昌平が理事長を務める日本映画学校があるし、毎年「しんゆり映画祭」なんてのが開かれるし、昭和音楽芸術学院や川崎市アートセンターもあって、なんだか文化の香りの高い土地柄ですが、それにしてはというか、だからこそか、私好みの映画をあまり公開してくれません。そんなわけで、今日も観る映画が無いのではないかと危惧されましたが、幸いなことにちゃんと観たい映画が公開されていました。有り難や〜、有り難や〜っ。
 
 「ブラック・ダリア」
 ジェイムズ・エルロイの原作をブライアン・デ・パルマが映画化した作品です。でも、私は原作を読んでいません。観ていて、なんだかLAコンフィデンシャルみたいだなと思ったら、同じ原作者だったんですね。(本当は「LAコンフィデンシャル」+「狼たちの街」みたいな感じです)
 
 さて、久々のデ・パルマ作品とあって期待して臨みましたが、さすがに導入部からの盛り上げ方は見事で、お得意の移動カメラによる長廻しや、クレーンを使った俯瞰撮影なんか素晴らしいし、思わず唸る細かい演出もあって、こりゃ久々の傑作かと期待が高まります。でも、それぞれのキャラの印象が薄いせいか、複雑に絡む登場人物の名前もいちいち覚えていられません。おかげで、真相が次々と明らかになっていく段になって、名前を呼ばれても顔が浮かばず、そいつはだれよ?あいつはだれだ?と、頭の中は混乱するばかりです。多分原作ファンや英語が堪能な人には問題ないのでしょうが、私は推理についていくのに大忙しでした。それでも結局、リーの妹のことは分からず終いだった様な気がします。うーむ、DVDでしっかり復習しなければ!私としては、もっと話を整理してくれた方が分かりやすくて有り難いのですが、それではきっと、原作のダークで混沌としたイメージが失われてしまうのでしょうね。
 
 ただ、やっぱり出演者が地味な印象で、なんだか今一つ感情移入できません。例えば主演がブラピとディカプリオだったら(ヘビー級じゃないけど…)もっと面白くなるのにと思ってしまいました。
  ☆☆☆★★★(ビミョーです。)
 
 「16ブロック」 
 ヒマで酒浸りの老刑事が16ブロック先の裁判所に重要参考人を護送するだけの話です。でも、とんでもない陰謀に巻き込まれて、刑事にとっても参考人にとっても、人生最悪の日になってしまいます。しかし、それは本当に最悪の日だったのか?
  
 いや、本当に単純な映画なんです。ブルース・ウィルス主演だし、監督はリチャード・ドナーだし、単純明快なアクション映画かと思っていましたが、確かにそうではあっても、ひと味違う作りになっています。観た印象としては、リチャード・ドナー監督の老練さというか、巧さを感じました。お話としては良くあるパターンです。刑事が犯罪者を護送する途中で思わぬ事件に巻き込まれるとか、寡黙な主人公におしゃべりな黒人のコンビとか、それに警察内のあれやこれやが絡むとか、映画で出尽くした感のある、あんなネタやこんなネタが次々と登場します。
 
 で、こんなもんかネと目の肥えた観客を油断させといて、次々に裏切っていきます。ラストのオチだって決まってるじゃないかと思っていたら、見事にやられました。最後の数秒前までは、なんじゃい、そんなもんかの印象が、最後の最後で見事ひっくり返りました。あんなベタなセリフやこんな荒い演出も、みんなこのためだったのかも?終わりよければすべて良し。見終わって、私もなんだか頑張れそうな気になりました。だから、私はこの映画が好きです。 堂々と言いたいことを主張できる、こんな映画も良いもんです。
 ☆☆☆☆★★★★(人間は変われる!)
 
 「ワールド・トレード・センター」
 2001年9月11日のあの事件現場に急行し、崩壊したビルの下で生き埋めになった警察官の実話です。すべて事実と証言に基づいて作られていますから、映画的な演出を挟む余地は非常に少なく、ドラマチックな展開にするために手を加えることもままならなかったと思います。例えば同じ日の同時多発テロを扱った「ユナイテッド93」など、生き証人はいませんから、想像を膨らませる余地があるのですが、逆にこの作品にはそんな余地など許されません。こんな作品に果敢に挑戦したオリバー・ストーンという監督も大したものですが、あの日の傷がまだ癒えていないこの時期に敢えてこの作品を作ろうと英断した製作者も大した勇気です。
 
 しかし、さすがに様々な描写において、被害者や遺族、更には人種問題に関しては、細かい配慮が成されています。例えば、地下1階で断続的に聞こえた大きな音の正体とか、警察車両をつぶした原因とかは、暗に含めて語らず、ビルに衝突する旅客機の映像も見せず、犯人グループに関する情報も伏せています。このあたりに製作者の、この作品を悪戯にセンセーショナルな作品にせず、ただ事実を伝えようという真摯な態度が見て取れます。
実際の現場は、それこそ地獄絵図でしたし、だいたいセンセーショナルな映像は、ニュースで散々流されていますから、今さら傷をほじくり返すのも、関係者にとってはあまりに酷なことに違いありません。

 そんなわけで、この作品は事件自体よりも、事件の後、如何に献身的で勇気のある救助活動が行われたかについて焦点が当てられています。確かに、この点はニュースでは伝えられなかった部分でもあり、悲惨な事件を嘆き、憎むよりも、その中にも希望を見出すという点で、これは大変意義ある作品になっていると思います。ただ、主人公たちが助かったからといって、手放しで喜べないのも事実ですが…。
 ☆☆☆★★★
(うむむ、どういう人に奨めたら良いのでしょうか…?実話だけに評価しにくいです。)