MAY 2006
Diary

5月1日 「復讐のV」

 映画の日です。いつものように映画を観に行く日なのですが、今日は困りました。私が観たい「アンダー・ワールド〜エボリューション」はワーナー・マイカル新百合ヶ丘で1回だけ、「トム・ヤム・クン!」はワーナー・マイカル海老名で2回だけの上映で、しかも上映時間がダブっています。仕方なしに新百合ヶ丘で済ますことにしました。おかげで、今日は2本だけです。まあ体力にも自信がないので、無理はよしましょう。
 
 さて1本目は「Vフォー・ベンデッタ」です。アラン・ムーア作、デイビッド・ロイド画の有名なコミックを「マトリックス」シリーズの助監督だったジェイムズ・マクティーグが監督し、ワチャウスキー(この発音が正しいそうです)兄弟が製作した作品です。まだ原作を読んでいないのでよく判りませんが、原作とはかなり世界観がかなり違うようです。でも、「V」という仮面のテロリストの登場する、政治色の強い物語というところは同じようです。まあ、どちらにしても、原作とは別の独立した作品として観るべきでしょう。
 この作品、予告からして捕らえ処のない、微妙なニュアンスを漂わせていましたが、観てみたら、たしかに良い意味で期待を裏切られました。だいたい「マトリックス」ばりのアクション映画を期待してみたら、まず肩すかしを食ってしまいます。これはむしろ、反体制的な色合いの強い復讐劇であり、叶わぬ愛の物語でもあります。例えて言えば「巌窟王」であり、「オペラ座の怪人」であり、「1984」「華氏451」「時計仕掛けのオレンジ」「未来世紀ブラジル」…といった要素をふんだんに織り交ぜた、刺激的なエンターテインメントであります。何より、最近地下鉄爆破テロの起きたばかりのロンドンが舞台だということが、とにかく驚きます。こういう作品を堂々と作る製作者の気概を感じます。
 そんなわけで、この作品は間違ってもB級作品ではありませんから、その内容も奥が深いものがあります。出ている役者も一級揃いですから、その演技を観ているだけでも重厚な雰囲気が漂って、まるでシェークスピアの「マクベス」を観ているかのようです。演出のキレも鋭く、複雑な内容の割りに、最後まで緊張を持続させる手腕はなかなか見事です。
 この作品で特に素晴らしいのは、なんと言ってもV演じるヒューゴ・ウィービングの演説でしょう。淀みなく理路整然と、詩を朗読するかのように、程よい抑制を持って、しかし充分聞く者の心を高揚させる、実に素晴らしい演説です。字幕の訳も素晴らしい。(あの人じゃないので納得!)
 ところで、私はこの映画を観ていて、色々な疑問が浮かんでしまいました。(以下ネタバレにつき自主規制!)例えば、Vはどうやってあんなに巧妙な仕掛けが出来たのだろうか?とか、資金源はどうしたんだろう?とか、大量の物資をどうやって運んだのだろうか?とか、膨大な数の仮面や衣装はどこの工場で作ったのだろうか?とか…とにかくやることが大がかりなので、どう考えてもたったひとりでは不可能です。それに、最後のシーンでも、どうしたら示し合わせたように、みんな同時に整然と行動を起こせたのか?このあたり、とっても不思議でした。こんなことをするには絶対仲間が必要だと思うし、画面には全く登場しませんが、ちゃんとした地下組織があるんじゃないかとさえ思うのです。で、ふと思いつきました。Vは偶然超人的な能力を身につけましたが、もしかしたら、それは身体能力だけはなかったのかもしれません。昔「催眠」「千里眼」という映画がありましたが、あれと同じような能力を持っていたのではないでしょうか?Vはたしか、眼もないはずですから、その可能性は充分あると思うのです。そう、あの演説にはそういう意味合いもあったのですよ、きっと!
   
☆☆☆☆★★★ (観客に媚びない作りなので、誰にでも奨められるわけではありません)
(評価:☆は個人的好き度、★はお奨め度)

 2本目は「アンダーワールド〜エボリューション」です。これは前作「アンダーワールド」
の完全なる続編で、前作を観ていなければ何が何やらさっぱりというくらい、観客を選ぶ作りになっています。前作では狼人間(ランカー)と吸血鬼(ヴァンパイヤ)の戦いとういう古典的な構図を現代(?)に持ってきたところが新鮮でしたが、今回はその抗争の起源とも言うべき「始祖」の謎が明らかになります。
 とにかく、始祖は最強らしいです。しかも、その後の子孫はみな始祖の「何か」を受け継いでいるらしい。でも、ハイブリット(混血種)はすべてを超越した存在のようだ。−−というわけで、始祖から受け継いでいる「何か」を断ち切り、ハイブリットが目覚め、「エボリューション」が起こるワケなんです。
 でも、まだ主人公セリーンの立場が今一つハッキリしません。もしかしたら、まだ謎があるのかも知れません。なんでも最初から3部作の構想だったそうですから、次回作でとんでもないことが起きるかも知れませんね。
 前回の話とリンクしている部分も多いので、「アンダーワールド」を観ていないと、今回の作品を楽しむのはなかなか難しいでしょう。でも、前作で世界観や主人公達の紹介が済んでいるので、今回はひたすらエンターテインメントに専念することが出来ました。おかげでアクションの方も、あの手この手といろいろな仕掛けも豊富で、飽きさせません。しかも、久しぶりに画面にボカシが入っていたりして、別の楽しみも増えました。
 ただ、狼人間と吸血鬼の戦いという構図にも、少々飽きが来たように思います。3部作の最後を飾る次回作では、さらに驚愕の何かを是非とも用意して欲しいものです。
 今回、劇場も少ないこともあって、かなりマニアックな観客が集まっていたようで、観客の反応もなかなか良かったように思います。「ウィリアムが可哀想!」という感想が多く聞かれました。う〜む、たしかにその通りだ!

☆☆☆☆★★★ (前作を観ることが必須です)