FEBRUARY 2006
Diary

2月25日 「ナルニア国物語」
 
 ワーナー・マイカル新百合ヶ丘へ「ナルニア国物語第一章〜ライオンと魔女」の先行ロードショーを観に行きました。一番良い席がネットで簡単に先行予約できたので人気がないのかなと心配していましたが、行ってみると見事に満席でした。主演の子供達が今一つだし、何しろ最近不作続きのディズニーですから、中身を見るまではやっぱり不安が残ります。
 
 でも、前座に流れた予告作品はどれも面白そうです。「ゲド戦記」は主題歌が良いね。「パイレーツ・オブ・カリビアン2」は主演の3人が再登場で期待が膨らみます。ピクサーの「カーズ」は車の擬人化が流石に上手い!こうして見ると、ディズニーも結構頑張っているじゃないか。おかげで、公開前に抱いていた不安もすっかり氷解しました。さあ、本編も期待しちゃうぞ!
 
 「ナルニア国物語第一章〜ライオンと魔女」
 「ロード・オブ・ザ・リング」「ハリー・ポッター」のファンタジー大作が興行的に大成功を収めたので、ついに真打ちがお目見えする事になりました。今年はもう一つの雄「ゲド戦記」までもジブリでアニメ化するし、今後も「エラゴン」シリーズや「ライラの冒険」シリーズその他も続々と映画化されるようで、いやホントに良い時代になりました。
 
 第二次大戦下、ロンドンに住むペベンシー四兄妹は、ドイツ軍の空襲を逃れてイギリスの片田舎にあるカーク教授の屋敷に疎開します。その広大な屋敷にはひとつの古びた衣装ダンスがあり、兄妹は偶然そのタンスの奥が雪に覆われた不思議の国ナルニアに通じていることを発見します。そして、ナルニア国が白い魔女によって100年もの間春を奪われてきたことを知り、やがてナルニアの命運を分けた戦いに巻き込まれていくのです…。
 
 さて、アニメ帝国のディズニーにも陰りが見えはじめて久しいですが、ここのところの低迷ぶりには目を覆うモノがあります。CGアニメの台頭で、ディズニーでヒットしたアニメはと言えば、ピクサーとの提携作ばかり。肝心のセルアニメもジブリに株を奪われて、もはや立つ瀬無しです。実写映画でも「アルマゲドン」なんかは上手くいきましたが、「パール・ハーバー」は歴史的敗北を喫しました。
 
 そこで、この窮地を脱するために、ディズニーはついに思い切った変革を行いました。ジブリを取り込み、自社のCEOを辞任させてピクサーを買収し、ライブ・アクションでも社運を賭けてこの「ナルニア国物語」の製作に取り組んだのです。
 
 何しろ監督は、あのディズニーアニメをおちょくった「シュレック」の監督ですし、特殊メイクは「ロード・オブ・ザ・リング」のWETAです。視覚効果に至っては、ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス、リズム&ヒューズ、ILMという世界3大SFX社を結集させて、1500カットにも及ぶCGIシーンを作り上げました。とにかく、最後のスタッフロールに載っているCGIスタッフの数は尋常じゃありませんよ。
 
 …と、ディズニーのこの作品に対する力の入れようは充分わかりますが、肝心の出来は如何でしょうか?
 
 さすがに一流のスタッフを集めただけのことはあり、実に良くできています。オープニングから本編に至る導入部の演出など見事なモノです。情感あふれる音楽も素晴らしく、涙を誘います。SFXも完璧で、アスランなど本物としか思えません。が、しかし、正直な感想としては、良くも悪くもディズニーという印象を受けました。
 
 まず、これはディズニー映画全般に言えることですが、平均的なアメリカの子供達を念頭にキャスティングするせいか、主役の子供達が平凡過ぎて華がありません。これがハリー・ポッターやハーマイオニーだったらと想像すると、いかにも残念でなりません。
 
 また、あくまでも児童を対象に作られているため、様々な制約を受けて、それが全体的な物足りなさを生んでいます。例えば、折角剣や弓という武器を手にしながら、それを明確に使うという描写は許されません。しかも相手は動物ですから、戦闘シーンは二重三重にオブラードのかかった描写にならざるを得ないのです。おかげで、折角の武器の効果を発揮するチャンスを失っていまい、何のための武器かわからなくなってしまいました。それはつまり、主人公達の活躍の場を奪っていることに他なりません。ですから一般の大人が観ると、どうしても食い足りない印象を受けてしまうでしょう。
 
 アメリカでは物語の宗教的な一面が強調されて大ヒットしましたが、世界的な市場ではどうかというとどうも疑わしく、特に日本では難しいかも知れません。う〜ん、出来は良いのだけれど、惜しいなぁ。

 ☆☆☆☆★★★