FEBRUARY 2006
Diary

2月1日「WOW頂天ホテル」

 気が付いたら2月になってしまいました。今朝、米国アカデミー賞ノミネートが発表されたので、早速シネマニアのコーナーにも載せておきました。長編アニメで「ハウルの動く城」がノミネートされたのには承伏しかねるところがありますが、おおむね予想通りの結果でした。それにしてもCG作品は嫌われたもので、長編アニメ賞にノミネートされた作品はクレイアニメ、人形アニメ、セル(風)アニメでしたし、CG盛り沢山のスターウォーズ・エピソードⅢなんか視覚効果賞にノミネートもされませんでした。(もっとも選ばれた3作品だってCGが沢山使われているのですが…)CGによって映画人達の職域が犯されていくことへの反発が強く表れているように思います。
 
 今日はまた映画の日ですので、例によってワーナー・マイカル新百合ヶ丘へ行きました。行ってみて驚いたことに、チケット売り場から長蛇の列が出来ているではありませんか。確かに今日は半額だし、雨も降っているし、受験で休みの学校が多いかも知れませんが、それにしてもこの混みようは尋常ではありません。2月なのに、まるで初詣に来たみたいでした。
 
 で、本日のお題は「THE有頂天ホテル」であります。三谷幸喜監督によるグランドホテル形式の群像劇です。年越しカウントダウンの準備に追われる(一応)一流ホテルでの年越しまでの2時間のドラマを(「24」のように)リアルタイムで描きます。
 
 登場する様々な人々が複雑に絡み、各人がそれぞれの思いを新たに新年をむかえるという緻密なシナリオは、さすが三谷幸喜と感心させられます。画面の隅々で交差する人々といい、至る所に散りばめられた小ネタの数々といい、実に良く作り込まれた作品です。またキャスティングも見事で、わざと捻った使い方をして、各役者の潜在的な個性を上手く引き出しています。
 
 しかし、映画としては今一つ物足りなさを感じてしまいます。テレビドラマや舞台劇のような作りからは映像のダイナミズムが感じられません。多くの人物を登場させるのはいいのですが、彼らのエピソードを同等に割り振って、小ネタに終始しているため、全体として平板で散漫な印象を受けます。また、最後のカウントダウンに向けて各エピソードを収束させる構成においても、話をまとめ上げることに精一杯なせいか、躍動感と盛り上がりが感じられません。特に、一番盛り上がる折角のカウントダウンを上手く生かし切れていないというのが残念というかもったいないです。
 
 総じて、繊細で緻密なシナリオ作りと役者の使い方は実に見事ですが、演出に大胆さと映像的な面白さが欠けているため、メリハリのない平板な作りになっている様に思います。観ている分には楽しくて面白い作品ではありますが、観た後の印象は薄く、物足りなさを感じます。今後の邦画を支える優秀な作家の作品だけに、いつもよりやや厳しく採点しておきます。
 
 ☆☆★★★
  
 ところで、「フジテレビジョンとライブドアが初めて本格的にタッグを組み、舞台作品を主催する記念すべき共同事業」になるはずだった、ミュージカル「グランドホテル」はどうなっちゃったんでしょうか?